中国語発音教材 目次 はじめに 1課 2課 3課 4課 テスト

第三課 子音(しいん)


3-1 子音の種類

[豆知識] 音節の頭に来る子音のことを、中国語では「声母」と言う。

 中国語の子音には以下のようなものがあります。



子音の種類無気音有気音説明
唇音(しんおん)bpmf唇を使う発音
舌尖音(ぜっせんおん)dtnl舌先を上あごの歯のすぐ裏につける発音
舌根音(ぜっこんおん)gkh舌の根元を盛り上げてノドの奧から出す発音
舌面音(ぜつめんおん)jqx舌の側面から出す発音
捲舌音(けんぜつおん)zhchshr舌先を口のなかでそりあげる発音
舌歯音(ぜっしおん)zcs口を閉じて歯のあいだから出す発音


 子音の種類(唇音とか舌尖音など)の並べかたは、おおむね「かんたんに発音できる順番」になっています。
 子音のそれぞれの列は、左から右に、無気音、有気音、それ以外の子音、という順番に配列されています。 唇音の各子音(b p m f)を例にとると、bは無気音、pは有気音、mとfはそれ以外、です。
 無気音と有気音という区別は、日本語にも英語にもない中国語独特のものです。後(3-3)で詳しく説明します。

 
3-2 子音の発音練習のときは後に母音をつける

 発音の練習のとき、子音だけでは声を出すことができず不便です。そこで便宜的に、子音の発音を練習するときはそれぞれ以下のように母音をつけて発音をする習慣になっています。

bopomofo
 
detenele
gekehe
jiqixi
zhichishiri
zicisi


 例えば、b p m fになぜaではなくoをつけて発音練習するかというと、b p m fは唇を使う発音なので、口を大きくあけるaよりも口を丸めるoをつけた方が発音が自然で楽だからです。つまり、aよりもoのほうがb p m fと相性(あいしょう)が良いからです。
 他の子音についても、同様に、発音練習のときはそれぞれ相性の良い母音をつけます。

[豆知識] ji を第一声で ji1 発音すると「鶏(ニワトリ)」の意

全部第一声で qi1 zhi1 ji1 と発音すると「七只鶏(七羽のニワトリ)」の意



 
3-3 無気音と有気音 boとpoの発音のしかた

 日本語の子音の発音には、清音・濁音・半濁音の三つがあります。
 例えばハヒフヘホは清音、バビブベボは濁音、パピプペポは半濁音です。
 中国語には濁音がありません。そのかわり「無気音と有気音」という区別があります。これは日本語や英語にはない発音なので、注意してください。

[豆知識] 韓国語の子音の発音は、日本語よりも中国語に似ている。

 まず、無気音boと有気音poの発音を、正確にできるようにしましょう。

boの発音練習 日本語の「ボ」と「ポ」の中間の発音です。まず、上の唇と下の唇を軽くあわせます。自分に自分でキスする感じで、やさしく唇をとじあわせ、自分の唇のやわらかさの感触を感じてください。次にボとポの中間くらいの感じで、ボーと声を出してください。

poの発音練習 日本語にも英語にもない中国語独特の発音です。pというアルファベットを当てていますが、英語のpのように発音してはなりません。
 日本人にとって、boよりもこのpoのほうが発音は難しいです。
 poの発音の手順は、以下のとおりです。
 まず、ノドの声帯をふるわすことなく、唇と吐息だけで軽く「ポ」と発音します(非常に小さい声でヒソヒソ話をする感じで、ポと発音する)。この「母音を伴わぬポ」を、ここでは仮に、ひらがなで「ぽ」と表記することにします。
 次に、ノドの奧を息がこする感じでホーと発音します(日本人の耳にはホーとコーの中間に聞こえます)。
 この二つの発音を、初めはゆっくり、次第に速くつなげて発音してゆきます。「ぽ、・・・ホー」「ぽ、ホー」「ぽホー」という風に。
「ぽ、ホー」「ぽホー」「po」 →

 poと発音するとき、ピンインでは書き表せませんが、pとoのあいだにホーという、ノドをこする息の音が一瞬聞こえます。「有気音」の「気」とは、このホーというノドをこする息のことなのです。

[豆知識] アニメ「北斗の拳」のケンシロウや、映画「少林寺」で「ハーッ」と「気」を吐く時は、息が
ノドをこする中国式の「h」で発音するので、強そうに聞こえる。下の写真は少林寺(秘密写真館)

少林寺

 boとpoの発音練習のとき注意すべき点は、以下の三つです。

・日本人の中国語初心者はboを小さな声で、poを大きな声で発音しがちですが、中国人は全く同じ音量で発音します。boを無気音、poを有気音と呼びますが、これは決して「無気力な発音」「気合のこもった発音」という意味ではありません。
boとpoの違いは、「息の強さ」の違いではありません。「息を出すタイミング」の違いです
 boと発音するときは、軽くくっつけた唇を開く瞬間に息はぬけてしまうので、ノドの奧をこするホーという吐息の音は聞こえません。それゆえ無気音と言います。
 いっぽうpoと発音するときは、軽くくっつけた唇を開いてから約0.5秒ほど、ホー、と、吐息がノドをこする音が聞こえます。つまりpoとは「(母音なしの)ポ+(ノドをこする吐息)ホ+(母音)オー」を短時間に組み合わせた発音なのです。子音と母音のあいだに、ノドをこする吐息(これが「気」)が約0.5秒ほど漏れるので、有気音と呼びます。

 boとpoの区別ができない初心者は、とりあえず、日本語や英語ふうにそれぞれボー(濁音)、ポー(半濁音)と発音してゴマカしても、中国人は理解してくれます。ただし、中国人が耳できくとすぐに外国人の訛りであることがわかってしまいます。
 ちなみに逆もまた真なりで、日本語を勉強する中国人にとって、日本語の清音・濁音・半濁音の区別は、とても難しいものなのです。

[参考] 無気音と有気音の発音の違いを練習するときは、小さく短冊状に切った紙を指でつまんで唇のまえに垂らして、bo、poと発音してみるとよいでしょう。正確な発音であれば、どんなに大きな声でboと怒鳴っても、紙は微動だにしないはずです。逆に、どんなに小さなヒソヒソ声でpoと発音しても、紙片はホーというノドをこする吐息の風圧で大きく動くはずです。

 
3-4 中国語の子音を発音するコツ

 一言で極論すると、日本語は「母音優先」ですが、中国語は「子音優先」の言語です。  中国語を発音するときは子音の部分をゆっくりめに発音するよう心がけましょう。
 日本語では、ほとんどの子音は「一瞬の小爆発」です。ところが中国語では、子音は時間をかけてゆっくりと発音します。日本語の子音のように、一瞬のうちに短く発音してはなりません。
 日本語では、子音よりも母音のほうがはるかに強いのです。そのため、例えば
  カキ (柿でも夏期でも牡蠣でも)
という日本語では、カのkとキのkは、実は微妙に違う発音になっているのです。
 仮に、カのkを k1 、キのkを k2、と表記すると、日本語のカキは、
  k1+a k2+i (カ キ)
であって、決して
  k+a k+i (クア クイ)
ではないのです。それほど、k1 と k2 の両者の子音は、口のかたちが違っています)。
 カキに限らず、日本語では、後にどんな母音が続くかによって、子音の色あいが変わってしまうのです。その反面、日本語の母音は、前にどんな子音が来ようと、決して変化しません
 中国語や英語の母音はゴムのように「やわらかい」ですが、日本語の母音はダイヤモンドのように「かたい」、と言えるでしょう。
 くどいようですが、中国語や英語では、母音よりも子音のほうが強いのです。外国人が日本語「カキ」を発音すると、往々にしてカとキのkを全く同じに発音しようとするので、日本人の耳には「クァクィ」のように聞こえてしまいがちなのは、そのためです。
 逆もまた真なりです。日本人が中国語や英語を発音するときは、つい日本語の発音のクセで、後続の母音にあわせた口のかたちで子音を発音してしまいがちです。すると外国人の耳には、一発で日本人ふうの訛りだということがわかってしまいます。
 中国語や英語を発音するときは、まず子音本来の口のかたちを作って子音を発音し、そのあと続けて(その子音にあうように歪めた口のかたちで)母音を発音します。そして中国語の子音を発音するときは、日本語の子音の一・五倍から二倍の時間をかけるつもりで、ゆっくりめに発音してください。
 「子音の発音に時間をかける」。このコツを守るだけでも、ずいぶん発音のレベルが違ってきます。

 
3-5 子音の発音練習

b p m f は唇をやわらかく

  boポオー poポホー moムオー foフォー 
 

・注意 moは一応「ムオー」とヨミガナを振っておきましたが、日本語のモーの前に小さなム(m)をつけて、mモー、という感じで発音すると、より中国語らしくなります。
 foは英語のfと同じく、上の歯を軽く下の唇にくっつけて発音してください。

  deダー teター neナー leラー 
 

・注意 母音 e の発音にも注意してください(e の解説はこちら)。
    neはンナー、leは小さなル(l)を前につけて、(ル)ラー、という感じで発音すると、より中国語らしくなります。

  geガー keカー heハー 
 

・注意 heは便宜的にhで表記していますが、英語のhとも日本語のハヒフヘホとも違います。中国語のhは、ノドの奧を息でこするようにして出す発音で、日本人の耳にはハーとカーの中間のように聞こえます。

  jiジー qiチー xiシー 
 

・注意 jiは日本語のジーとチーの中間のような感じで発音します。qiは「ちヒー」という感じで、q(ち)とi(イー)のあいだに一瞬「ヒ(母音なし、子音のみ)」とノドをこする吐息をもらします。xiは日本語シーとほぼ同じです。

[豆知識] 中国語で「唇音」は現実を否定する気持ちを、「舌尖音」は現実を強調する気持ちを表す。
例えば、「0パーセントの肯定」=否定を表す言葉は、不 bu4 没 mei2 別 bie2 否 fou3 莫 mo4 ・・・等々。
また「50パーセントの肯定」=疑問・推量・婉曲を表す言葉は、句末の ba や ma など。
逆に、「120パーセントの肯定」を表すときは、句末に de とか ne とか le など「舌尖音の軽声」をつける。



3-6 日本人にとっての最難関の発音 捲舌音(けんぜつおん)について

  zhiジー chiチー shi シー riリ゛ー 
 

 捲舌音は「そり舌音」とも言います。zhi を例にとって発音の手順を説明します。
・まず、ゆっくり ji と発音します。ji の j を発音する瞬間、自分の舌の先が、上あごの前のほう(歯に近い部分)に一瞬だけ軽くくっつくことを確認し、そのくっつくポイントを記憶してください。
・次に、ji、ジー・・・zhi と、舌先が上あごにくっつくポイントをだんだん口の奧にずらして発音を繰り返すと、自然に捲舌音になります。
・zhiの舌先が上あごに軽くふれるポイントは、ji より少しだけ口の奧です。舌先を口の奧のほうに捲きあげすぎると変な zhi になってしまうので、加減に気を付けてください。

   同様の手順で、qiからchiへ、xiからshiへと舌先のポイントをずらしながら発音練習してみてください。
 riは、zhi chi shi と似た舌の位置で発音します。日本語のラリルレロに濁音(゛)はありませんが、しいて漫画風に「ら゛り゛る゛れ゛ろ゛」と発音してみてください。中国語riは、しいてカナ表記すれば「リ゛ー」という感じに近いかもしれません。

  ziズー ciツー siスー 
 

 ziを例にとって発音の手順を説明します。口を横にひっぱり、yiの口のかたちで、前歯の隙間からzi(ズー)と発音します。ローマ字表記にひきずられて「ズィー」と発音してはいけません。ciとsiも同様の口のかたちで発音します。ciは有気音なので、「つ」と母音のあいだに一瞬、ノドをこする息をもらすよう注意してください。

 
3-7 三つのi

 中国語の母音がきわめてやわらかいこと、つまり、前後にどんな発音がくるかによって中国語の母音はグニャグニャに変化することは、すでに説明しました。
 母音のなかでも、口のあけかたが小さい「ひかえめな母音」eとiは、特に変化の度合いが大きいのです。
 ピンインでiと表記される母音は、大別して以下の三つに変化します。

 ・ (原則) 通常の「i」
 口を横にひっぱる「イー」です。ほとんどの子音の後につくiがこれです。

 ・ (例外その一) zhi chi shi ri の「i」
 下あごがさがる関係上、口を強く横にひっぱれず、結果としてiの口のあけかたがあいまいな「イー」になる。日本語の「イ」に近い発音です。

 ・ (例外その二) zi ci si の「i」
 yiの口のかたちですが、日本人の耳にはウーと聞こえます。

練習 三つの「i」の違いに注意して「xi shi si (シー しー すー)」を発音せよ。 
 


 なぜ上記のようにiの発音が変化するかというと、そう変化させて発音したほうが自然で楽だからです。

   以上で、中国語の母音と子音についての説明は、すべて終わりました。