文字と発音の基礎  05. 話し言葉における発音の変化   ドイツ語スピーキング講座のトップサイトへ跳ぶ

0. はじめに
1. 動詞の人称変化語尾における変化
  1.1. du を主語とする疑問文における -st du の同化・融合
  1.2. ich を主語とする動詞の活用語尾 e の脱落
  1.3. 動詞・助動詞の語尾 en からの e の脱落と n の音節化
2. 冠詞・形容詞類の活用語尾における変化
  2.1. 定冠詞
   2.1.1. 先行する前置詞等との同化の例
   2.1.2.後続する名詞等との同化の例
  2.2. 不定冠詞
  2.3. その他の冠詞類や形容詞
3. 人称代名詞によく起こる音韻変化
  3.1. 代名詞esからの【ə】の脱落による【t】と【s】の融合
  3.2. その他の人称代名詞の音韻変化
4. 二音節以上の単語や合成語に見られる音韻変化
  4.1. アクセントのない母音e【ə】の脱落
  4.2. 合成語等における前後にならぶ子音の融合
   4.2.1. 同一の子音の融合の例
   4.2.2.同じ調音点を持つ無声音と有声音の同化・融合の例
  4.3. 三つ以上の子音の連鎖に見られる音韻変化
  4.4. 二つの子音間で見られる音韻変化
   4.4.1. 【t】と後続の子音との間の音韻変化
   4.4.2.【s】と後続の子音との間の音韻変化
   4.4.3.【n】と後続の子音との間の音韻変化
   4.4.4.無声音による後続する有声音の同化
5. 二つの単語間のつながりの際に見られる音韻変化
  5.1. 二つの単語間で前後にならぶ子音の融合
   5.1.1. 同一の子音の融合の例
   5.1.2.同じ調音点を持つ無声音と有声音の同化・融合の例
  5.2. 三つ以上の子音の連鎖に見られる音韻変化
  5.3. 二つの子音間で見られる音韻変化
   5.3.1. 【t】と後続の子音との間の音韻変化
   5.3.2.【s】と後続の子音との間の音韻変化
   5.3.3.【n】と後続の子音との間の音韻変化
   5.3.4.無声音による後続する有声音の同化
6. 音韻変化規則一覧(重要なもの抜粋)

 

0.はじめに   ページトップへ

 ドイツ語の話し言葉によく見られる音韻変化は大きく4つあります。1つ目は、アクセントのない母音 e【ə】の脱落です。2つ目はそれにより、後続する子音の【m】や【n】や【l】がその分だけ長く発音される音節化です。3つ目は、前または後の音の特徴に引きずられてもともとの子音が変化する同化です。同化が【ə】の脱落によって引き起こされることも多いです。4つ目は、同じ子音が2つ続くと融合して一つになることです。
 ただし、以下では、こうした音韻変化の特徴のみを基準として分類するのではなく、まず最初に動詞の人称変化語尾、冠詞・形容詞類の活用語尾、人称代名詞を例にとって、実際にどんな変化がおきるかを具体的に見ていきます。次に、2音節以上の単語や合成語において、あるいは、単語間のつながりにおいて、先ほど上げた4つの音韻変化がどんな風に起こるかを見ていきます。
 以下では、最初に説明を読み、ゆっくりの場合と速く読んだ場合の音を聞き比べてください。そのうえで、実際に発音してみましょう。自分で自然に発音できるようになれば、単にドイツ語らしい発音ができるようになるだけでなく、聞きとりの力も伸びます。なお、特に重要度の高いものには、** を、それに準じるものには * をつけてあります。

 

1.動詞の人称変化語尾における変化   ページトップへ

1.1.du を主語とする疑問文における -st du の同化・融合**   ページトップへ

 動詞の人称変化語尾 -st と主語の du が疑問文などで並んで表れると、似た音である st の【t】と d【d】がくっついて真ん中の t が脱落し【sdə】や【stə】になります。したがって、たとえば、Woher kommst du? は「ヴォヘア コムストゥ ドゥ」ではなく、常に「ヴォヘアコムスドゥ」あるいは「ヴォヘアコムストゥ 」と発音します。

例01:Woher kommst du?    【komsdə】あるいは【komstə
    出身はどこですか?
 

例02:Wie heißt du?    【haisdə】あるいは【haistə
    名前は何ていうの?
 


1.2.ich を主語とする動詞の活用語尾 e の脱落**   ページトップへ

主語が ich の時の語尾 e は、話し言葉ではほとんど発音されません(【ə】の脱落)。その場合、書くときは、省略の印であるアポストロフィーを使って、たとえば Ich geh' nicht ins Kino.と書いたり、単に省略したまま Ich geh nicht ins Kino.と書かれます。

例03:Ich gehe nicht ins Kino.
    映画には行きません
 

以下の例04 の haben のように語幹末が b で終わっているときは、それに続く語尾の母音のeが省略されるので【b】の音が無声音の【p】に変わる変化も伴います。

例04:Ich habe Hunger.    【ha:p
    おなかがへった。
 

このように、b / d / g / ng / s【z】などで終わり、かつ動詞の次の単語(上の例では Hunger)が母音ではじまっていない場合には、それらがそれぞれ【p】/【t】/【k】/【ŋ】/【s】という対応する無声音に変わります。

例05:Ich werde nicht Lehrer.    【ve:rt
    私は教師にはなりません。
 

例06:Ich sage dir was.    【za:k
    君にいうことがある。
 

例07:Ich singe gern Karaoke.    【ziŋ
    私はカラオケが好きです。
 

例08:Ich reise gern.    【rais
    旅行が好きです。
 

※ 1人称単数の語尾 e【ə】の脱落により語幹末の音が無声音になる代表的な動詞
finden / werden / einladen / haben / geben / bleiben / schreiben / fragen / legen / tragen / sagen / zeigen / bringen / singen / lesen など
 


 ほかに、動詞のすぐ後に母音ではじまる in などの前置詞などが来ると動詞の語幹とそれがくっついて、発音されるケースもあります。たとえば以下の例では、はやく読むと「イッヒヴォーニンヒロシマ」と聞こえます。また、さらに、in の【i】も脱落しその分だけ n を長く発音し「イッヒヴォーヌンヒロシマ」となることもあります。

例09:Ich wohne in Hiroshima.    【...v:nin...】となり、さらに【...v:nn...】
    私は広島に住んでいます。
 


1.3.動詞・助動詞の語尾 en からの e の脱落と n の音節化*   ページトップへ

 原形の時や主語が Sie / wir / 3人称複数のSie の時の動詞・助動詞の語尾 en は、話し言葉ではそこから e【ə】が脱落し、かわりに残った n がその分だけ長く発音されます。このように子音が母音のように音節の中心になって延ばせるようになることを音節化と言います。ここでは【n】の音節化が起こっています。なお、以下では長く読まれる子音の発音記号の下に下線を付けて音節化していることを示すことにします。

例10:Wie finden Sie das?    【...findn...】
    これをどう思いますか?
 

 通常、n の文字は【n】の発音でそのまま音節化されますが、下の例11では、e の脱落の後、残った n が、さらに、その前にある m(両方の唇を閉じて出す両唇音)に引きずられて同化し、【n】ではなく【m】の音で音節化され、【kmm】となります。

例11:Woher kommen Sie?    【...kmm...】
    ご出身はどちらですか。
 

 m のほかに語幹が b や p あるいは pf や f で終わる時も同じく【m】の音節化が見られます。直前に来るこれらの子音はいずれも唇を合わせて発音するので、なめらかに発音できるよう、後続する n のところでも自然に唇が閉じて m の音に同化してしまうからです。

例12:Was haben Sie?    【...habm...】
    どうしたんですか?
 

例13:Wie lange bleiben Sie noch in Japan?    【...blaibm...】
    日本には、まだどれくらいいるのですか?
 

例14:Morgen gehe ich einkaufen.    【ainkaufm
    明日私は買い物に行きます。
 

※ 語尾 en からの e【ə】の脱落と同化により【m】による音節化を引き起こす代表的な動詞
kommen / schwimmen / nehmen / atmen / haben / geben / bleiben / schreiben / jobben / tippen / klappen / schimpfen / kämpfen / kaufen / helfen / schlafen / laufen /rufen /hoffen など
 


 下の例15では、e の脱落の後、残った n がその前にある g に引きずられて【ŋ】の音で音節化され、【zingŋ】となります。g のほかに、語幹が k や a/o/uの後のch【x】で終わる時も同じく【ŋ】の音節化が見られます

例15:Wir singen gern Karaoke.     【...zingŋ...】
    私達はカラオケが好きです。
 

例16:Was trinken Sie gern?    【...trinkŋ...】
    飲み物は何が好きですか?
 

例17:Hier darf man nicht rauchen.    【rauxŋ
    ここでタバコを吸ってはいけません。
 

※ 語尾 en からの e【ə】の脱落と同化により【ŋ】による音節化を引き起こす代表的な動詞
fragen / legen / tragen / zeigen / singen / bringen / legen / liegen / hängen/ denken / schicken / stecken / trinken / tanken / machen / lachen / brauchen /suchen / kochen / rauchen など
 


2.冠詞・形容詞類の活用語尾における変化   ページトップへ

2.1.定冠詞   ページトップへ

2.1.1.先行する前置詞等との同化の例**   ページトップへ

 定冠詞の dem / den では、速くなるとその中の e【ə】が脱落し、残った m や n が音節化されて長くなりますが、多くの場合、さらに、先行する前置詞あるいは動詞などとくっついて、同化や音の脱落を伴うことも多いです。

例18:mit dem Auto    【midm】または【mitm
    車で
 

例19:in den Schrank    【intn】となり、さらに【inn
    タンスの中へ
 

例20:an den Seiten    【antn】となり、さらに【ann
    両サイドに
 

例21:auf dem Tisch    【auftm】となり、さらに【aufm
    机の上に
 

例22:auf den Tisch    【auftn】となり、さらに【aufm
    机の上へ
 


2.1.2.後続する名詞等との同化の例*   ページトップへ

 den の語末の子音 n【n】は、m / b / p / pf / v / f の音で始まる名詞が後続する場合はそれに同化して【m】に、g / k で始まる名詞が後続する場合はそれに同化して【ŋ】に、それぞれ変わります

例23:in den Bergen    【inm】か、あるいは【ə】もさらに脱落し【intm】から【inm】へ
    山の中で
 

例24:mit den Farbstiften    【mitm】か、あるいは【ə】もさらに脱落し【mittm】から【mitm】へ
    色鉛筆で
 

例25:in den Kühlschrank    【inŋ】か、あるいは【ə】もさらに脱落し【intŋ】から【inŋ】へ
    冷蔵庫の中へ
 


2.2.不定冠詞**   ページトップへ

 不定冠詞の場合は、語尾の e が脱落するだけでなく語幹 ein の最初の ei の部分が脱落したり、両方が同時に脱落することもあります。したがって、einen が【ainn】になるだけでなく、【nən】や【nn】になったりします。例26-27はその例です。また ein と einen は、上述の定冠詞 den と同様、語末の n【n】が m / b / p / pf / v / f の音で始まる名詞等が後続する場合それに同化して【m】に、g / k で始まる名詞等が後続する場合それに同化して【ŋ】に、それぞれ変わります。例28-29はその例です。

例26:Ich habe einen Tisch.    【ainn】か、あるいは ei が脱落し【nən】から【nn】へ
    私には机があります。
 

例27:Wir haben eine Tasche.    【ain】か、あるいは ei が脱落し【nə】から【n】へ
    私達にはカバンがあります。
 

例28:Ich habe ein Buch.    【aim】か、あるいは ei が脱落し【m
    私は本を一冊持っています。
 

例29:Einen Kaffee bitte.    【aiŋ】か、あるいは ei が脱落し【nəŋ】から【ŋ】へ
    コーヒー一杯ください。
 


2.3. その他の冠詞類や形容詞*   ページトップへ

 その他の冠詞類や形容詞でも活用語尾中の e が脱落し、n が音節化することは良くあります。例30-31はその例です。また、語末が n で終わるものは、上述の定冠詞や不定冠詞と同様、m / b / p / pf / v / f の音で始まる名詞が後続する場合それに同化して【m】に、g / k で始まる名詞が後続する場合それに同化して【ŋ】に、それぞれ変わります。例32-35はその例です。

例30:Das habe ich von meinen Eltern bekommen.    【mainn】となり、さらに 【main
    これは両親からもらいました。
 

例31:Guten Tag!    【gu:tn
    こんにちは!
 

例32:Guten Morgen!    【gu:tm
    おはよう!
 

例33:Das ist mein Buch.    【maim】
    これは私の本です。
 

例34:Hast du meinen Kugelschreiber?    【mainŋ】となり、さらに 【maiŋ
    君、僕のボールペン持ってる?
 

例35:Das ist mein Geld.    【maiŋ】
    これは私のお金です。
 


3.人称代名詞によく起こる音韻変化   ページトップへ

3.1.代名詞 es の【ə】の脱落による【t】と【s】の融合**   ページトップへ

 代名詞 es は t の後では、多くの場合その e【ə】が省略され、ツ【ts】という音になります。この省略は、書く場合には、アポストロフィーで表記されます。

例36:Wie geht's dir?    【ge:ts
     元気ですか?
 

例37:Was gibt's Neues?    【gipts
     何か変わったことありますか?
 


3.2.その他の人称代名詞の音韻変化*   ページトップへ

 人称代名詞は、もともと、文アクセントが置かれず速く読まれますが、それが進むと以下のような変化が現れます。いずれも語末や語中の【ə】が弱くなったり脱落したりすることに伴う変化です

例38:Ich schicke ihnen das Buch.     【i:nn】となり、さらに【i:n
     私は彼らに本を送ります。
 

例39:Woher kommt er?     【ə】
     彼の出身はどこですか?
 

例40:Habt ihr das gehört?     【i:】
     君たちそれ聞いた?
 

例41:Gehen wir essen?     【vi:】あるいは【və】
     食事に行きませんか?
 


4.二音節以上の単語や合成語に見られる音韻変化   ページトップへ

4.1.アクセントのない母音e【ə】の脱落*   ページトップへ

 2音節以上の単語や合成語あるいは活用語では、アクセントのない母音 e【ə】が表れることが多く、これらは速くなると脱落します。特にアクセントの無い母音 e【ə】が2つ続けて表れるケースでは、文法的な役割を担っていない方の e【ə】が必ず脱落します。下の例42では、teueres の中のアクセントの来ない後ろの2つの e のうち、一番後ろの e は es という中性4格を示す語尾の一部なので脱落せず、かわりに真ん中の e が消えます。この変化は、書く場合は、脱落した e を単に省略し、次の例42では teures と書かれるのが普通です。

例42:Wir brauchen kein teu(e)res Auto.    【tYrəs】
     我々には高い車なんて要らない。
 

 語末や語中での e【ə】の脱落により有声音が無声音に変化する現象とその条件は語尾変化の時と同様です。以下の例43では、s の後の母音が無くなるので【z】が【s】に変わっています。

例43:Speis(e)karte    【∫paiskartə】
    (レストランの)メニュー
 

 以下、例44-49は、en というつづりからの e【ə】の脱落による音節化の例です。動詞の人称変化語尾 en の場合と同様、例44のような【n】による音節化だけでなく、それぞれ直前の子音字が m / b / p / pf / v / f の時は【m】による音節化(例45-47)が、g / k / ch【x】の時は【ŋ】による音節化(例48-49)が起こります

例44:Leut(e)n    【lYtn
     人々
 

例45:Trepp(e)nhaus    【trεpmhaus】
     階段の吹き抜け
 

例46:Schiff(e)n    【∫ifm
     船
 

例47:Reg(e)nschirm    【re:gŋ∫irm】
     雨傘
 

例48:Schink(e)n    【∫inkŋ
     ハム
 

例49:Woch(e)nende    【vxŋεndə】
     週末
 


 eln というつづりを持つ単語では、アクセントのない e【ə】の脱落により、次の例50-51のような l の音節化も起こります

例50:Kartoff(e)ln    【kartfln】
     じゃがいも
 

例51:samm(e)ln    【zamln】
     収集する
 


4.2.合成語等における前後にならぶ子音の融合   ページトップへ

4.2.1.同一の子音の融合の例   ページトップへ

 次の例52-56のように合成語等でまったく同じ子音が二つ並ぶ場合、速く読むと融合して一つになるのが普通です。

例52:Landtag     【t】
     地方議会
 

例53:Halbpension    【p】
     2食付きの宿
 

例54:zurückkommen    【k】
     戻ってくる
 

例55:Schreibtischstuhl    【∫】
     事務机用のいす
 

例56:auffallen    【f】
     目立つ
 


4.2.2.同じ調音点を持つ無声音と有声音の同化・融合の例   ページトップへ

 次の例57-61は、無声音と有声音という違いがあるだけで、それ以外はすべての調音点(その音の特徴を決める口・唇・舌・喉等の位置や場所)が同じ音が、前後に並んだ場合の例です。この場合は、前の無声音が消えたり、逆に前の無声音に引きずられて後ろの音の有声化の度合いが下がり全体が無声音になって一つの音に融合したりします

【t】+【d】→【d】または【t】
例57:
entdecken    
     発見する
 

【p】+【b】→【b】または【p】
例58:
Abbild    
     写し
 

【k】+【g】→【g】または【k】
例59:
weggehen    
     立ち去る
 

【s】+【z】→【z】または【s】
例60:
Aussage    
     発言
 

【f】+【v】→【v】または【f】
例61:
Laufwerk    
     (コンピュータの)ドライブ
 


4.3.三つ以上の子音の連鎖に見られる音韻変化*   ページトップへ

 子音が3つ以上並んだり、アクセントのない母音の脱落等により結果的に子音が重なるような単語でも音の変化が見られます。その中で一番重要なのは子音に挟まれ【t】の脱落です。例62-69などはその例です。

例62:kos(t)bar    【ksba:r
     高価な
 

例63:Selbs(t)porträt    【zεlpsprtrε:】
     自画像
 

例64:Pos(t)karte    【pskartə】
     葉書
 

例65:Schrif(t)steller    【∫rif∫tεlə:】
     作家
 

例66:Las(t)wagen    【laswa:gŋ
     トラック
 

例67:gas(t)freundlich    【gasfrYntliç】
     客を歓待する
 

例68:Frem(d)sprache    【frεm∫praxə】
     外国語
 

 次の例69では子音に挟まれた t が脱落した後、【s】が後ろの【∫】の調音点に引きずられて【∫】に変わる同化も伴っています。

例69:fes(t)stellen    【fεs∫tεln】となり、さらに【fε∫∫tεln】あるいは【fεtεln
     確認する
 


4.4.二つの子音間で見られる音韻変化   ページトップへ

4.4.1.【t】と後続の子音との間の音韻変化*   ページトップへ

 【t】は、子音に挟まれていない場合も例70-78のように後ろに来る子音の特徴に引きずられて同化し、別の無声音に変わります。その際、後ろの子音も無声音で前後が同じ音になる場合は、それらが融合するので、結果的に【t】の音だけが脱落した形になります

【t】+【b】→【pb】
例70:
mitbringen    【mipbringŋ
    持参する
 

【t】+【g】→【kg】
例71:
mitgehen    【mikge:n
    一緒に行く
 

【t】+【v】→【pv】
例72:
mitwohnen    【mipvo:nn
    一緒に住む
 

【t】+【f】→【pf】
例73:
mitfahren    【mipfa:rn
    一緒に乗って行く
 

【t】+【ts】→【ts】
例74:
mitzählen    【mitsε:ln】
    数に入れる
 

【t】+【∫】→【t∫】→【∫】
例75:
Zeitschrift    【tsairift
    雑誌
 

例76:Entschuldigung    【εnt∫uldiguŋ】
    すいません
 

【t】+【p】→(【pp】)→【p】
例77:
Stadtplan    【∫tapla:n】
    市街地図
 

【t】+【k】→(【kk】)→【k】
例78:
Kreditkarte    【kredi:kartə
    クレジットカード
 


4.4.2.【s】と後続の子音との間の音韻変化   ページトップへ

 すでに、例69にも出てきましたが、s【s】は、その後に【∫】が来ると【∫】に変わります

【s】+【∫】→【∫∫】→【∫】
例79:
Aussprache    【au∫∫praxə】あるいは【aupraxə
    発音
 


4.4.3.【n】と後続の子音との間の音韻変化   ページトップへ

 n【n】は後続する子音が m / b / p / pf / v / f の場合は【m】に、後続する子音が k / g の場合【ŋ】に、それぞれ変わります。例80-85がその例です。

【n】+【p】→【mp】
例80:
anpacken    【ampakŋ
    取りかかる
 

【n】+【k】→【ŋk】
例81:
ankommen    【aŋkomm
    到着する
 

【n】+【m】→【mm】→【m】
例82:
anmachen    【ammaxŋ】あるいは【amaxŋ
    始める
 

【n】+【g】→【ŋg】または【ŋ
例83:
angenehm    【aŋgne:m】あるいは【aŋne:m】
    ここちよい
 

【n】+【f】→【mf】
例84:
Infinitiv    【imfiniti:f
    不定詞
 

【n】+【v】→【mv】
例85:
Einwohner    【aimvo:nər】
    住民
 


4.4.4.無声音による後続する有声音の同化*   ページトップへ

 【s】/【p】/【k】/【f】などの無声音の後に、【d】/【b】/【g】/【z】等の有声音が来るとそれらはぞれぞれかなりの程度無声化して【p】/【t】/【k】/【s】等の音に近づきます。(なお、たとえば【s】と【z】のように調音点を同じくする無声音と有声音の連続については、すでに4.2.2.で扱いましたので、ここでは触れません)

【k】+【b】→【kp】
例86:
zurückbringen    【zurykpringŋ
    返却する
 

【s】+【g】→【sk】
例87:
ausgehen    【auske:n
    外出する
 


5.二つの単語間のつながりの際に見られる音韻変化   ページトップへ

5.1.二つの単語間で前後にならぶ子音の融合   ページトップへ

5.1.1.同一の子音の融合の例   ページトップへ

 語末の子音と後続する単語の語頭の子音が同じ音の場合も融合して1つの音になります

例88:Er isst Pommes und trinkt dazu ein Bier.    【...untrinkt...】
     彼はフライドポテトを食べ、そのうえビールも飲んだ。
 

例89:Sie mag klassische Musik.    【...maklasi∫ə...】
     彼女はクラッシック音楽が好きだ。
 

例90:Nach dem Urlaub packe ich mein Gepäck gleich aus.    【...uəlaupakə...】
     休暇から戻ると私はすぐ荷物を片付ける。
 

例91:Das ist technisch schwer.    【...teçnive:ə】
     それは技術的に言って難しいです。
 


5.1.2.同じ調音点を持つ無声音と有声音の同化・融合の例   ページトップへ

 同じ調音点を持つ無声音と有声音が並ぶと、そのどちらかの音に同化して融合する現象は、例57-61で見たような一つの単語内だけでなく、以下の例92-96のように二つの単語が並んだ場合にも起こります

【t】+【d】→【d】または【t】
例92:
Jemand hat den Computer angemacht.
     誰かがコンピュータを起動した。
 

【p】+【b】→【b】または【p】
例93:
Gib bitte nicht so viel Geld aus!
     お金をそんなにたくさん使わないで。
 

【k】+【g】→【g】または【k】
例94:
Zum Frühstück gibt's Kaffee.
     朝食にはコーヒーがあります。
 

【s】+【z】→【z】または【s】
例95:
Ich kaufe mir das Sofa.
     私はこのソファーを買います。
 

【f】+【v】→【v】または【f】
例96:
Ich wollte immer Fotograf werden.
     私はずっと写真家になりたかった。
 


5.2.三つ以上の子音の連鎖に見られる音韻変化*   ページトップへ

 【t】の音は、単語間の場合も、前後を子音に挟まれると脱落します。例97-103はその例です。

例97:Deine Mail is(t) bei mir angekommen.    【...isbai...】
     君のメールは私のところに着きました。
 

例98:Das Restaurant is(t) preiswert.    【...ispraisve:ət】
     このレストランは割安です。
 

例99:Ich habe die ganze Nach(t) gearbeitet.    【...naxgəarbaitət】
     私は一晩中仕事しました。
 

例100:Er is(t) krank.    【...iskrank】
     彼は病気です。
 

例101:Ich will Polizis(t) werden.    【...politsiswe:ədn
     私は警官になるつもりです。
 

例102:Das Gemüse is(t) frisch.    【...isfri∫】
     この野菜は新鮮です。
 

例103:Bitte möglichs(t) schnell per Mail an mich wenden!     【...mø:kliçs∫nεl...】となり、さらに【...mø:kliç∫∫nεl...】あるいは【...møkliçnεl...】
     大至急メールで私にご相談下さい!
 


5.3.二つの子音間で見られる音韻変化   ページトップへ

5.3.1.【t】と後続の子音との間の音韻変化*   ページトップへ

 【t】は、例70-78で見たような一つの単語内だけでなく、二つの単語間でも後ろに来る子音の特徴に引きずられて同化し、以下の例104-108のように別の無声音に変わります

【t】+【g】→【kg】
例104:
Wir heizen noch mit Gas.    【...mikga:s
     私達はまだガス暖房だ。
 

【t】+【b】→【pb】
例105:
Der Schrank ist voll mit Büchern.    【...mipby:çərn】
     キャビネットは本で一杯だ。
 

【t】+【k】→(【kk】)→【k】
例106:
Kann ich hier auch mit Kreditkarte zahlen?    【...mikrεdi:tkartə...】
     ここではクレジットカードでも払えますか?
 

【t】+【p】→(【pp】)→【p】
例107:
Das Mädchen spielt mit Puppen.    【...mipupn
     その女の子は人形で遊んでいる。
 

【t】+【∫】→【t∫】→【∫】
例108:
Wir handeln mit Spielzeug.    【...mipi:ltsYk...】
     私達はおもちゃを扱っています。
 


5.3.2.【s】と後続の子音との間の音韻変化   ページトップへ

 【s】は、二つの単語間でも後ろに【∫】が来るとそれに同化・融合します

【s】+【∫】→【∫∫】→【∫】
例109:
Wir kennen uns schon lange.    【un∫∫n】あるいは【unn】
    私達はもうかなり前からのつきあいです。
 

例110:Das Spiel finde ich gut.    【da∫∫pi:l】あるいは【dapi:l】
    その試合は良いと思うよ。
 


5.3.3.【n】と後続の子音との間の音韻変化   ページトップへ

 n【n】は、例80-85で見たような一つの単語内だけでなく、二つの単語間でも、後続する子音が m / b / p / pf / v / f の場合は【m】に、後続する子音が k / g の場合【ŋ】に、それぞれ変わります

【n】+【m】→【mm】→【m】
例111:
Dein Musikgeschmack ist gut.    【daimmεil】あるいは【daimεil】
    そのメールは私のところに着きました。
 

【n】+【b】→【mb】
例112:
Er ist mein bester Freund.    【maimbεstə:】
    彼は私の親友です。
 

【n】+【p】→【mp】
例113:
Hier habe ich ein Paket.    【aimpake:t】
    ここに小包があります。
 

【n】+【pf】→【mpf】
例114:
Da ist ein Pflegeheim.    【aimpfle:gəhaim】
    あそこに老人ホームがある。
 

【n】+【f】→【mf】
例115:
Ich habe ein Foto von ihr.    【aimfo:to】
    彼女の写真を一枚持っています。
 

【n】+【v】→【mv】
例116:
Am Sonntag laufen wir zum Park.    【laufmvi:ə】
    日曜日に私達は公園まで歩きます。
 

【n】+【g】→【ŋg】または【ŋ
例117:
Ich habe nie Auto fahren gelernt.    【fa:rŋgəlεənt】
    私は自動車の運転は習ったことがありません。
 

【n】+【k】→【ŋk】
例118:
Ich bin Koch .    【biŋkox】
    私はコックです。
 


5.3.4.無声音による後続する有声音の同化*   ページトップへ

 2つの単語間でも無声音の後に有声音が来るとそれらはやはり無声化する傾向があります

【s】+【d】→【st】
例119:
Ich komme aus Deutschland    【austYt∫lant】
    私はドイツの出身です。
 

【p】+【z】→【ps】
例120:
Ab Sonntag arbeite ich wieder.     【apsnta:k】
    日曜日からまた仕事を始めます。
 


6.音韻変化規則一覧(重要なもの抜粋)   ページトップへ

◎ en【ən】からの e の脱落・前方同化による n の音節化

【m】/【b】/【p】/【pf】/【f】/【v】【ən】m 例: 11 12 13 14 22 45 46

【g】/【k】/【x】         +【ən】ŋ 例: 15 16 17 47 48 49

 上記以外の音          【ən】n 例: 10 19 20 44


◎ en【ən】からの e の脱落・後方同化による n の音節化

【ən】【m】/【b】/【p】/【pf】/【f】/【w】m 例: 23 24 32 33

【ən】【g】/【k】              →ŋ 例: 25 29 34 35

【ən】上記以外の音             →n 例: 26 30 31 38


◎ eln【əln】からの e の脱落による l の音節化

【əln】ln】 例: 50 51


◎ 同一の子音は融合して一つになる

【t】【t】【t】 例: 52 88

【p】【p】【p】 例: 53 90

【k】【k】【k】 例: 54 89

【f】【f】【f】 例: 56

【∫】【∫】【∫】 例: 55 91


◎ 同じ調音点を持つ無声音と有声音は融合してどちらかになる

【t】【d】【d】または【t】 例: 01 02 18 57 92

【p】【b】【b】または【p】 例: 58 93

【k】【g】【g】または【k】 例: 59 94

【f】【v】【v】または【f】 例: 61 96

【s】【z】【z】または【s】 例: 60 95


◎ 子音に挟まれた【 t 】は脱落する

【ftm】【fm】 例: 21 22

【fts】【fs】 例: 65

【mts】【ms】 例: 68

【xtg】【xg】 例: 99

【stb】【sb】 例: 62 97

【stp】【sp】 例: 63 98

【stg】【sg】 例:Pos(t)gebühr / fes(t)gestellt

【stk】【sk】 例: 64 100

【stv】【sv】 例: 66 101

【stf】【sf】 例: 67 102

【st∫】【s∫】【∫∫】または【∫】 例: 69 103


◎【t】は後続の子音によって同化され、他の無声音に変わることがある

【t】【b】【pb】 例: 70 105

【t】【p】 →(【pp】)→【p】 例: 77 107

【t】【g】【kg】 例: 71 104

【t】【k】 →(【kk】)→【k】 例: 78 106

【t】【v】【pv】 例: 72

【t】【f】【pf】 例: 73

【t】【s】【ts】 例: 36 37

【t】【ts】【ts】 例: 74

【t】【∫】【t∫】 例: 75 76 108


◎【s】は後続する【∫】によって同化される

【s】【∫】【∫∫】【∫】 例: 79 109 110


◎【n】は後続の子音によって同化され、他の音に変わることがある

【n】【m】【mm】m 例: 82 111

【n】【b】【mb】 例: 28 112

【n】【p】【mp】 例: 80 113

【n】【pf】【mpf】 例: 114

【n】【v】【mv】 例: 85 116

【n】【f】【mf】 例: 84 115

【n】【g】【ŋg】またはŋ 例: 83 117

【n】【k】【ŋk】 例: 81 118


◎【s】/【p】/【k】/【f】などの無声音は、後続する有声音を無声化する

【s】【g】【sk】 例: 87

【s】【d】【st】 例: 119

【p】【z】【ps】 例: 120

【k】【b】【kp】 例: 86

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